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暑い日が増えてきましたね。そうなるとあの厄介な存在が活動を始めます。そう、「蚊」です。夏の子どもの大敵と言ってもよいほど、この時期になるとお子さんたちはたくさん蚊に刺されてきます。たった一日で10か所以上刺されてくるお子さんや、耳が倍くらいの大きさまで腫れてしまうお子さんもいます。
今日は蚊に刺されたときの対処法と、「蚊アレルギー」という少し特殊な病気についてお話します。
🌸蚊に刺されるとどうして腫れるの?
日本にはおよそ200種の蚊がいますが、その中で人を刺すのはアカイエカ(夜に活動、屋内にもいる)、ヒトスジシマカ(草むらなどにいて昼に吸血する)などです。
蚊に刺されると、蚊の唾液が皮膚に注入されます。それに対するアレルギー反応が「かゆみ」や「腫れ」として現れます。反応の種類は主に
の2つがあります。
この反応は「抗体」が出来ることにより起こるので年齢によって違います。
生まれたばかりの赤ちゃんでは無反応、小さな子供の頃は遅延型反応のみ、成長につれて即時型反応と遅延型反応の両方が出るようになり、大人になる頃には即時型反応だけ、さらに年齢を重ねると再び無反応になります。
体質や刺される頻度にも個人差があります。
🌸蚊に刺されたらどうする?
まさに蚊に刺されている現場を目撃したら、まずは刺し口から蚊の唾液をしぼり出すようにして洗い流すのが有効です。これだけでも症状を軽くできることがあります。
かゆみが強いと掻いてしまいますが、掻いた刺激でさらに痒み物質が放出され、もっとかゆくなってしまいます。刺されたらすぐに市販のかゆみ止めを塗るとよいでしょう。
掻き壊すとそこから細菌が入って「とびひ」になることがあります。治療には抗菌薬(飲み薬、塗り薬)、必要に応じてかゆみを抑える薬も使います。
🌸蚊アレルギーって何?
虫刺されで強く腫れたり水ぶくれができたりすると、「蚊アレルギーでは?」と心配になって受診される方もいらっしゃいます。
しかし、「蚊アレルギー(蚊刺過敏症)」は、非常にまれな病気です。
EBウイルスというウイルスの持続感染が原因と考えられ、通常B細胞に感染するこのウイルスがNK細胞の感染すると「慢性活動性EBV感染症」と呼ばれ、蚊に刺された刺激により強い症状がでます。
具体的には刺された部分の強い腫れ、水ぶくれだけではなく、発熱やリンパ節腫脹などの全身症状を伴います。また刺された部分に潰瘍を形成し、のちに瘢痕を形成することもあります。
治療は確立されたものはありませんが、ステロイドや免疫抑制剤の内服を行ったり、根治のためには抗がん剤や造血幹細胞移植が必要となります。
私自身、10年ほど血液腫瘍を専門としていましたが、この疾患に実際に出会う機会は白血病や脳腫瘍に比べてずっと少なかったです。
最後になりますが予防も大切です。
蚊が侵入しないよう網戸を常に閉める、寝室の蚊は就寝前に殺虫あるいは防除しておく、外遊びでは虫よけを使用、肌の露出を少なくするなど出来るだけの対策をして、蚊の多い夏を乗り切りましょう。
滋賀医科大学医学部医学科 卒業、大津赤十字病院初期研修医、滋賀医科大学医学部付属病院 小児科、静岡県立こども病院 血液腫瘍科、聖マリアンナ医科大学病院 小児科助教
小児科専門医、血液専門医