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当院の病児保育だより「さくらんぼ」では、病児保育室で起きた心温まるエピソードをご紹介していますが、ご存じでしょうか?
今回はそれにならい、小児科医として10数年の間に私が出会った、小児科ならではのほっこりエピソードをご紹介したいと思います。
生後2か月の赤ちゃんを連れたお母さんと、2歳のお兄ちゃんが受診されました。受診理由は、「お兄ちゃんが赤ちゃんを踏んだ」というもの。
詳しくお話をうかがうと——
どうやらお兄ちゃん、なぜか赤ちゃんの上を“ぴょん”と飛び越えようとしたそうで…。
しかしジャンプ力が足りず、着地点が残念ながら赤ちゃんのお腹の上に。
幸い、赤ちゃんは元気で、お母さまも笑っておられましたが、「なんで飛び越えようと思ったんだろう、子どもの考えることって本当に読めないなぁ」と思った外来でした。
入院中の子どもたちがみんなで一緒にごはんを食べていたときのこと。
隣にいた女の子が、苦い漢方薬をがんばって飲んでいるのを見て、2歳の男の子が突然――
「ちゃいろのおちゅーちん、のみたい!(茶色のお薬が飲みたい!)」と大泣き!
漢方は子どもにとっても飲みにくいお薬なのですが、隣の子が飲んでいるのを見て、どうしても羨ましくなったようです。看護師さんが一生懸命なだめている姿が、なんとも微笑ましく、不思議な光景でした。
【後日談】
その男の子もちょうど同じ漢方を処方され、念願の「ちゃいろのおちゅーちん」を嬉しそうに「いいねー」と言いながら飲んでいました。
入院して間もない、生後10か月の赤ちゃん。病院の環境に慣れず、いつも泣いてばかりでした。
ある日、病室の外から様子をのぞくと、赤ちゃんが座ったままうとうと…。
近づくとまた泣いてしまうので、そっと見守っていましたが、なかなか横になりません。何度か倒れそうになりますが、なんとか座りなおしてまたうとうと。
そこへ看護師さんがやってきて「あの子、自分で寝転がれないんですよー」と言って、そっと横にしてくれました。
そうか…寝たくても寝転がれなかったんだね。気づいてあげられなくてごめんね、という気持ちになった出来事でした。
そんな人見知りが強くて、いつも大泣き、お母さんにべったりだった赤ちゃんですが——
5年後に再会したときには、他のお子さんを引っ張るリーダー的存在に!
お母さんも「今ではジャイ子ちゃんのようなんです」と、当時を懐かしそうに笑っておられました。
日々の外来では、お子さんたちがいろいろなものを見せてくれます。買ってもらったおもちゃ、お気に入りのぬいぐるみやタオル、素敵なドレスやキラキラ光る靴。
緊張を和らげるためにも、持ち物やお洋服について話すようにしているのですが、そうすると次の受診のときに「今日はこれ!」と新しいものを持ってきてくれるのです。
「今日はこの車だよ!」「アンパンマン持ってきた!」「保育園で作ったよー!」
中にはおもちゃの聴診器を首から下げて来てくれる子もいます。
「先生に見せたくて持ってきました」と言ってくださるお母さんもいて、私も毎回とても楽しみにしています。
外来では、弟妹を連れてお姉ちゃんやお兄ちゃんが一緒に来てくれることもあります。
中でも特に張り切ってくれるのが、お姉ちゃん。
「私がやる!」と弟妹のお洋服をめくってくれたり、「だいじょうぶよ〜」と優しくあやしてくれたり…。
その姿はまるで、小さなお母さんのようです。
でも、その“小さなお母さん”も、以前はよく泣いていた子。
その成長に思わずほっこりしてしまいます。
「きっとおうちでも頼りになってるね」と声をかけると、とても誇らしそうな笑顔を見せてくれました。
まだまだ思い出深いエピソードはたくさんあります。
スタッフとも、日々の診療のなかで「今日のほっこり話」を共有することがよくあります。
子どもたちの成長や、思いがけない発言、仕草のひとつひとつが、私たち小児科スタッフの心の栄養になっています。日々お子さまたちに元気をもらいながら、これからもより良い医療を提供し続けていきたいと考えています。
滋賀医科大学医学部医学科 卒業、大津赤十字病院初期研修医、滋賀医科大学医学部付属病院 小児科、静岡県立こども病院 血液腫瘍科、聖マリアンナ医科大学病院 小児科助教
日本小児科学会 小児科専門医、日本血液学会認定 血液専門医、小児血液・がん学会、日本血栓止血学会