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朝晩の冷え込みが厳しくなってきましたね。かと思えば、日中は夏のような暑さになる日もあり、寒暖差を感じる今日この頃です。
寒くなると風邪などの感染症の流行が気になる季節になります。お子さんが急に鼻水や咳をし始めたとき、
「いつもらった薬かわからないけど、飲んでも大丈夫かな?」
「上の子にもらった薬が残っているから、少し減らして飲ませてみよう」
「大人用の市販薬だけど、子どもに使っても大丈夫かな?」
そんなふうに考えたことはありませんか?
早く症状を楽にしてあげたい、しばらく病院には行けないから手持ちの薬でなんとかならないかなという気持ち、よくわかります。
しかし、特にお子さんの場合、きょうだいや家族に処方された薬を自己判断で使用することは、思わぬ副反応につながることもあります。
またお子さんの健康を思って始めたサプリメントでも、使い方によっては健康被害が起こることもあります。
今回は、日本小児科学会の「Injury Alert(傷害速報)」で報告された事例をもとに、子どもの薬の使い方で気をつけたいことをご紹介します。
日本小児科学会の傷害速報 No.150では、3歳の男の子が、父親に処方されたイミダゾリン系点鼻薬を使用した後に体調を崩した事例が報告されています。
この事例では父親に処方されたイミダゾリン系点鼻薬を、3歳のお子さんにも鼻炎症状があったため、医療機関に電話で確認したのちに使用しました。
その後、腹痛や食欲低下がみられ、さらに顔色不良、口唇チアノーゼ、活気低下、歩行困難、嘔吐などが出現したため、救急搬送となりました。受診先ではイミダゾリン系点鼻薬による急性薬物中毒の可能性が考えられました。経過観察により症状は改善しました。
乳幼児では鼻腔粘膜の未熟性から、イミダゾリン系薬剤は血管を収縮させる作用などを持ちます。種類や使用量によっては全身に影響が及び意識障害や呼吸抑制などの重い症状を引き起こすことがあります。特に乳幼児は鼻腔粘膜の未熟性から注意が必要です。
この点鼻薬はドラッグストアなどでも簡単に入手することができるため、国内外でも同様の報告があります。
薬だけでなく、健康によさそうに思えるサプリメントにも注意が必要です。
日本小児科学会の傷害速報 No.153では、7歳の男の子がサプリメントを摂取し、ビタミンD中毒を発症した事例が報告されています。
この事例では偏食を心配した保護者が、2種類のサプリメントを長期間にわたってお子さんに飲ませていました。
お子さんは吐き気や嘔吐、食欲低下、口の渇き、睡眠障害などがみられ、検査では血液中のカルシウム濃度が著しく上昇していました。入院して治療を受け、血液中のカルシウム濃度は改善しましたが、その後も歩行時のふらつきや筋力低下がみられ、経過観察を必要としました。
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、骨の健康を保つために必要な栄養素である一方、過剰に摂取すると高カルシウム血症などを引き起こすことがあります。
サプリメントは必要なお子さんに適切に使用すれば不足している栄養素を補うために役立つ場合があります。一方で、複数の製品を併用すると、同じ成分を重複して摂取してしまい、健康被害につながることがあります。
「体によさそう」「栄養を補えるから」という理由だけで、自己判断で多くのサプリメントを与えることは避けましょう。
家庭では、次の点を意識しましょう。
① ほかの人に処方された薬を使わない
お薬は診察時の症状、診察所見、体重、年齢に加えて併用薬や過去の使用歴などいろいろなことを考慮して処方されています。
同じような症状に見えても、同じお薬が適しているとは限りません。また大人には使用できる薬でも、お子さんには使用できない場合もあります。
お薬の使用方法に迷った場合には、まずは医師や薬剤師に相談しましょう。
※他の人に処方されたお薬を使用したり、自分に処方されたお薬を譲渡することは法律によって禁止されています。
② 医師・薬剤師から指示された量と回数を守る
お薬は適切な用法・用量を守って使用しないと、十分な効果が得らなかったり、副反応のリスクが高まったりすることがあります。
薬を減らしたり増やしたりする必要があると感じたときは、まず処方医に相談してください。
③ サプリメントも成分と摂取量を確認する
サプリメントは医薬品とは異なりますが、摂取する成分や量によっては健康被害を引き起こすことがあります。
また複数の製品を併用すると、同じ成分を重複して摂取することがあります。お子さんに使用する場合は、必要性や適切な摂取量について医師や薬剤師に相談しましょう。
④ 薬は子どもの手の届かない場所に保管し、内服は大人が管理する
お子さんの薬は飲みやすいように甘みがついているものもあります。過去にも咳止めシロップを一気に飲んでしまった事故も報告されています。こういった事故を防ぐため、薬はお子さんが自分で取り出せない場所に保管しましょう。
また内服は大人が管理するようにしましょう。飲んでいると思って実は全く内服していなかったり、ゴミ箱に捨てられていたりすることもありました。お子さんの健康のためにも、お子さんの年齢や発達段階に応じて、大人が服薬を管理しましょう。
ほかの人の薬を飲ませてしまった、量を間違えた、サプリメントを多く摂取してしまったなどの場合は、症状がなくても、薬の名前・量・使用時刻を確認して医療機関や中毒相談窓口に相談してください。
意識がおかしい、呼吸がおかしい、唇が紫色になっている、けいれんしているなどの症状がある場合は、直ちに119番で救急車を呼んでください。
自己判断で吐かせることは避けましょう。
薬は、正しく使えばお子さんの症状を和らげ、病気の治療を助けてくれる大切なものです。
一方で、使い方を間違えると、思わぬ健康被害につながることがあります。
私たち医師はお子さん一人ひとりに合った薬を、その時の症状、診察所見、年齢、体重などを考慮し処方しています。薬の使い方に迷ったときは、自己判断せず、医師や薬剤師に相談してください。
お子さんの健康を守るために、薬やサプリメントを安全に使うことを、ぜひご家庭でも意識してみてください。
出典
滋賀医科大学医学部医学科 卒業、大津赤十字病院初期研修医、滋賀医科大学医学部付属病院 小児科、静岡県立こども病院 血液腫瘍科、聖マリアンナ医科大学病院 小児科助教
日本小児科学会 小児科専門医、日本血液学会認定 血液専門医、小児血液・がん学会、日本血栓止血学会