赤ちゃんをRSウイルスから守る新しい選択肢「エヌフロンシア」とは?|世田谷区、桜新町の小児科|さくらキッズくりにっくのブログ

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赤ちゃんをRSウイルスから守る新しい選択肢「エヌフロンシア」とは?

「RSウイルス」という名前を聞いたことはありますか?

RSウイルスは、乳幼児を中心に流行する呼吸器感染症です。ほとんどのお子さんは鼻水や咳、発熱など、いわゆる「かぜ」のような症状で経過します。しかし、特に生後6か月未満などの小さな赤ちゃんでは、細気管支炎や肺炎などを起こし、入院が必要になることがあります。

そんなRSウイルス感染症を予防するための新しいお薬、**「エヌフロンシア®」**が2026年8月に日本で発売されました。

今回は、エヌフロンシアがどのようなお薬なのか、なぜ健康な赤ちゃんにもRSウイルスの予防が検討されるようになったのか、分かりやすく解説します。


🌸エヌフロンシアってどんなお薬?

エヌフロンシア®(一般名:クレスロビマブ)は、RSウイルスに対する「抗体」を赤ちゃんの体に直接投与するお薬です。

エヌフロンシアに含まれる抗体は、RSウイルスが細胞へ侵入する際に重要な「Fタンパク質」に結合し、ウイルスが細胞へ侵入するのを妨げることで、RSウイルスによる下気道疾患を予防します。

つまり、「赤ちゃん自身が抗体を作る」必要はなく、「RSウイルスと戦う抗体を直接届ける」というお薬です。


🌸なぜ、健康な赤ちゃんにもRSウイルスの予防が必要なの?

これまで日本では、RSウイルス感染症が重症化しやすい赤ちゃんを中心に、予防が行われてきました。

RSウイルス感染症が重症化するリスクが高いお子さんとしては、

  • 早産児
  • 慢性肺疾患のあるお子さん
  • 血行動態に異常のある先天性心疾患を持つお子さん
  • 免疫不全のあるお子さん
  • ダウン症候群のお子さん

などが挙げられます。

予防として代表的なのが、シナジス®(一般名:パリビズマブ)です。

シナジスは流行期に複数回投与することで重症化を予防してきました。

その後、長期間作用する抗体製剤であるベイフォータス®(一般名:ニルセビマブ)が登場しました。

ベイフォータスは2024年に日本で発売され、重症化リスクの高いお子さんだけでなく、生後初回のRSウイルス感染流行期を迎える健康な新生児・乳児も予防の対象(保険適応外)となりました。

では、なぜ「健康な赤ちゃん」にまで予防が必要なのでしょうか?

重症化リスクの高いお子さんに対して予防がされるようになってからは、リスクのあるお子さんの入院は確実に減りました。一方で重症化リスクの高い基礎疾患を持たないお子さんが、入院患者の大部分を占めるようになったのです。

日本小児科学会が紹介している日本のデータでは、2017~2018年の2歳未満の医療機関受診データを解析したところ、RSウイルス感染症による入院患者の約9割が重症化リスクのないお子さんでした。

つまり、

「重症化しやすい赤ちゃんを守る」ことはもちろん大切ですが、それだけではRSウイルスによる入院を十分に減らすことができない

ということです。

こうした背景から、現在は**「重症化リスクの高い赤ちゃんだけではなく、すべての赤ちゃんをRSウイルスから守る」**という考え方へと変わってきています。

エヌフロンシアも、こうした流れの中で登場した新しい予防の選択肢です。


🌸どんな赤ちゃんが対象?

エヌフロンシアは、

「生後初回のRSウイルス感染流行期を迎える新生児・乳児」

が対象となります。

承認上は、重症化リスクの高い赤ちゃんだけでなく、それ以外のすべての新生児・乳児について、RSウイルスによる下気道疾患の予防が適応となっています。

実際には、

・RSウイルス母子免疫ワクチン未接種の妊婦より出生した在胎36週以上の新生児
・妊婦へのRSウイルス母子免疫ワクチン接種後2週間以内に出生した在胎36週以上の新生児
・RSウイル氏母子免疫ワクチンの有効期間(通常6か月ほど)以降に明らかな初回のRSウイルス流行期を迎えた新生児

を始め、兄弟がいて感染リスクが高い、RSウイルス流行期に出生した、などが良い対象になるのではないかと考えています。


🌸いつ、どのように投与するの?

エヌフロンシアは、生後初回のRSウイルス感染流行期に、通常1回投与します。

投与量は、105mgを1回、筋肉内注射です。

ただし、RSウイルスの流行時期は地域や年によって変化します。

そのため、「○月になったら投与する」というように全国一律で決めるのではなく、その地域の流行状況や、お子さんがいつRSウイルスの流行期を迎えるのかを考えて投与時期を決めることが大切です。


🌸どのくらい効果があるの?

エヌフロンシアの有効性は、初回のRSウイルス感染流行期を迎える健康な正期産児・早産児などを対象とした国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験 004試験(CLEVER試験)で評価されています。

エヌフロンシアを1回投与した群で、投与後150日までのRSウイルス関連の医療介入が必要となった下気道感染症の発現率におけるプラセボ群に対するエヌフロンシア群の有効率は60.4%でした。

また、RSウイルス関連の入院率に対する有効率は84.2%でした。

ただし、ここで注意していただきたいのは、エヌフロンシアを投与すれば、RSウイルスに感染しなくなるわけではないということです。

あくまでも、RSウイルスによる下気道疾患を予防し、入院などにつながる重症化を減らすことを目的としたお薬です。


🌸シナジス・ベイフォータスとの違いは?

RSウイルスの予防には、エヌフロンシアのほかにもシナジス®、ベイフォータス®があります。

いずれもRSウイルスに対する抗体を直接投与するお薬ですが、対象となるお子さんや投与方法などが異なります。

シナジス®
重症化リスクの高いお子さんを対象として、RSウイルス流行期に原則として月1回投与します。

ベイフォータス®
長期間作用する抗体製剤で、初回のRSウイルス流行期を迎える健康な新生児・乳児も対象となっています。ただし重症化リスクの高いお子さん以外は自費診療となりますので、40‐100万円程度と非常に高額です。

エヌフロンシア®
初回のRSウイルス流行期を迎える新生児・乳児が対象で、105mgを1回筋肉内注射します。

どの製剤を使用するかは、お子さんの出生週数、月齢、基礎疾患、RSウイルスの流行状況などを踏まえて判断します。

なお、同じRSウイルス抗体製剤でも、同じ流行期にシナジスからエヌフロンシアへ切り替えることは推奨されていません。


🌸費用・ご予約について

エヌフロンシアは2026年8月に発売された新しいお薬です。

2026年9月現在、薬価基準に収載されておらず、健康保険の給付対象ではありません。

そのため、エヌフロンシアによるRSウイルス感染症の予防は、現時点では**自由診療(自費)**となります。

当院では66000円(自費診療)になります。

また事前決済による完全予約制となりますので、ご予約はお電話でのみお受けいたします。


🌸赤ちゃんをRSウイルスから守るために

RSウイルスは、ほとんどの子どもが幼児期までに経験する、とても身近な感染症です。

一方で、特に生後間もない赤ちゃんでは、細気管支炎や肺炎などを起こし、入院が必要になることがあります。

これまでのRSウイルス予防は、重症化リスクの高いお子さんを中心に行われてきました。

その結果、現在RSウイルスで入院するお子さんの多くが、もともと健康で重症化リスクのない赤ちゃんであることが分かってきました。

そのため現在は、

「重症化しやすい赤ちゃんを守る」から「すべての赤ちゃんをRSウイルスから守る」へ。

RSウイルス予防の考え方が少しずつ変わってきています。

エヌフロンシアは、その新しい選択肢の一つです。

「うちの子は対象になる?」

「自費でも予防したほうがいい?」

「いつ投与するのがよい?」

など、疑問に思うことがありましたら、お気軽にくりにっくまでご相談ください。

お子さんの月齢や出生週数、健康状態、地域の流行状況などを踏まえて、一緒に考えていきましょう。

院長 松岡 明希菜
記事監修
院長 松岡 明希菜

滋賀医科大学医学部医学科 卒業、大津赤十字病院初期研修医、滋賀医科大学医学部付属病院 小児科、静岡県立こども病院 血液腫瘍科、聖マリアンナ医科大学病院 小児科助教

日本小児科学会 小児科専門医、日本血液学会認定 血液専門医、小児血液・がん学会、日本血栓止血学会

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