ブログ
Blog
Blog
「赤ちゃんの頭の形が気になります」
予防接種や健康診断の際に相談されることがあります。
頭蓋変形とは?
大人の頭の骨は一つの骨として癒合していますが、赤ちゃんは8個の骨で形成されています。乳幼児期の急速な脳の成長のために、8個の骨は完全には癒合していません。そのため、簡単に骨の位置がずれ、頭蓋変形が起きます。
頭蓋変形の統一した定義がないため、発生頻度は不明ですが、乳児期早期には約40−50%の赤ちゃんに認められると報告されています。
突然死予防のために、仰向け寝を推奨されて以降、頭蓋変形の頻度が増加している現状があります。突然死予防のために、仰向け寝を守る必要はありますが、同時に頭蓋変形の頻度が高くなるのは、避けて通れません。
生後4ヶ月に頻度が最も高くなり、成長とともに改善し、頭蓋変形の頻度は2歳時点で3.3%に低下すると報告されています。
予防のためにできること
寝かせる位置・向きの工夫:自宅に戻ってからの生活で、授乳のたび頭の向きを入れ替えて赤ちゃんをベットに寝かせましょう。赤ちゃんは興味があるのある方に顔を向けるので、ベットに寝かせる際に、頭と足側を交互に入れ替えても良いでしょう。
むきぐせがある場合には、好みの向きとは逆の位置に顔が向くように、親御さんが声かけたり、興味があるものを置いたりしてみましょう。
タミータイム:赤ちゃんが起きている時間に、保護者などがみている環境下で、赤ちゃんをうつ伏せにして過ごす時間を作ることです。米国小児科学会では、タミータイムを一定時間実施することによって、後頭部の扁平化を予防し、運動発達を促進すると推奨しています。
いつから:自宅に戻ってから、1日2−3回、3−5分から始めて、おむつかえ、授乳後、日中の機嫌の良い時に行うことを勧めています。徐々に時間を伸ばして、30−60分はうつ伏せで過ごすようにしていきます。
どのような方法がありますか?:保護者の胸の上でのうつ伏せ、赤ちゃんがうつ伏せしている方向に保護者が横にいて目線を合わせてあげます。
注意点:赤ちゃんの口や鼻が塞がれないように観察しましょう。
生活上の工夫:赤ちゃんが起きている時は、可能な範囲で頭が圧迫されない姿勢で過ごす工夫をしましょう。抱っこする、ドーナツ枕の使用、よく向く方向の反対側から声をかけるなども良いでしょう。
治療は何?
上記の予防策を行っても、生後3−4ヶ月の時点で、次の症状が見られるときには、ヘルメット矯正治療を行うことがあります。
・目で物を追いかける時に左右差が明らかにあり、平らな頭の反対側に自ら顔を向けることができない
・平らな頭側の耳が前方に偏移している
・平らな頭側の前頭部が突出している
ヘルメット治療を行っている施設には限りがあり、費用、時間ともに要します。
また、治療は生後3−6ヶ月の間に始めることが高い改善率につながるとされています。
まずは、出産施設から自宅に戻った後より、予防のためにできることを少しずつ行っていきましょう。もし、2−3ヶ月の時点で頭の形が気になる方は、当院へご相談ください。当院ではヘルメット治療は行っていませんが、必要に応じて専門機関をご紹介させていただきます。
慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了、慶應義塾大学医学部 小児科、慶應義塾大学関連病院、慶應義塾一貫校校医、医療法人社団 育心会 理事長
医学博士、小児科専門医、小児科指導医