漢字は「書く」だけが学習ではない ― 読み書きに困りのある子どもへの学びの工夫 ―|世田谷区、桜新町の小児科|さくらキッズくりにっくのブログ

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漢字は「書く」だけが学習ではない ― 読み書きに困りのある子どもへの学びの工夫 ―

読み書きの困難(ディスレクシア・ディスグラフィア)について、正しい理解と支援の広がりをめざす啓蒙ブログ「ヨミカキのミカタ」。第3回目となる今回は、「漢字ドリルの工夫」について取り上げます。本記事は、読み書きサポートラボからの発信です。

 先日、SNSで多くの反響を集めている投稿を見かけました。漢字ドリルの宿題を通常通り書くのではなく、保護者が一文字ずつ漢字をシールに書き、子どもは正しい漢字を選んで貼る形に変えた、という投稿です。

 その投稿では、お子さんに読み書きの困難があり、漢字を書くことのハードルがとても高いため、保護者が考えた工夫として紹介されていました。本記事では、漢字の読み書きが困難な子どもに対し、「選んで貼る」という方法がなぜ学びにつながるのかを解説します。

 日本の小学校では6年間で1,026字の漢字を学びます。気が遠くなるような膨大な量ですが、漢字の難しさは、単に数が多いという点だけではありません。

・ほとんどの漢字は複数の読み方を持ち、文脈によって読み方が決まる
・漢字が組み合わさって熟語になると、単独のときとは異なる意味を持つようになる
・同音異字がたくさんある
・意味が捉えづらい抽象的な漢字が多い(例:格、部、象、期)
・画数が多い
・よく似た漢字が多い

 このように、漢字の難しさには様々な要因が絡みます。読み書きに特に困難がない子どもであっても、漢字の習得は簡単ではありません。実際に、小学校4年生以降は漢字の習得率が50~60%台に落ちるという指摘もあります(道村、2017)。読み書きの困難を持つ子どもにとって、漢字の習得がどれほど大きな負担になるかは、想像に難くないでしょう。

 このような子どもへの対応として、「宿題の量を減らす」「免除する」といった配慮が取られることもあります。本人のエネルギーが著しく消耗している場合には、このような配慮が重要になることもあります。

 一方で、漢字を学ぶことは、言葉そのものを学ぶことでもあります。漢字の学習を完全にあきらめてしまうと、語彙の広がりが妨げられる可能性もあります。ですから、子どもに合った「できる方法」で、漢字や言葉の学びはできる限り続けていきたいものです。

 さて、話を戻し、先の投稿の特に秀逸だと感じた点について解説します。この方法では、漢字を一字ずつ、保護者がシールに書いています。例えば、「予」「定」という漢字を1つずつ選び、貼り合わせることで「予定」という熟語を完成させます。

 読み書きの困難を持つお子さんは、音を分解したり、合成したりする操作が苦手なことがあります。「予定」という熟語の読み仮名が「ヨ・テイ」なのか、「ヨテ・イ」なのか、どこで音を区切ればよいのか分かりにくくなることもあります。

 そのような場合、音に対応する漢字を思い出して書くことは非常に難しくなります。一方、選択式であれば、その負担を大きく軽減することができます。また、どこで音が区切れるのかを意識する練習にもつながる可能性があります。さらに、色付きのシールを使っているため、「青のシールに答えがあるよ」などと視覚的なヒントを出しやすい点も、投稿の中で紹介されていました。これは支援の現場から見ても、非常に示唆に富んだ工夫です。

 日常の中でお子さんを丁寧に見ているからこそ生まれた、とても素晴らしい工夫だと感じました。

 

参考文献

道村静江(2017):読み書きが苦手な子もイキイキ唱えて覚える漢字指導法.明治図書

院長 松岡 明希菜
記事監修
院長 松岡 明希菜

滋賀医科大学医学部医学科 卒業、大津赤十字病院初期研修医、滋賀医科大学医学部付属病院 小児科、静岡県立こども病院 血液腫瘍科、聖マリアンナ医科大学病院 小児科助教

日本小児科学会 小児科専門医、日本血液学会認定 血液専門医、小児血液・がん学会、日本血栓止血学会

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