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こんにちは、さくらキッズくりにっくの心理士です🌸
WISCシリーズ第3回目の今日は、「知能検査のスコアは生涯変わらないの?」をテーマにお話ししていきます。なお、これまでのWISC解説シリーズの投稿は以下の通りです。
①知能検査WISC-Ⅴの結果、どう見ればいい?ースコアの意味を解説ー ←4月29日投稿済み
②知能検査WISC-Ⅴを受けるメリット・デメリットは?←6月2日投稿済み
③知能検査WISCのスコアは生涯変わらないの?←今回
〇WISC‐Ⅴで分かること、分からないことー知能検査にまつわるよくある誤解ー ←こちらは過去記事です。
お子さんがWISC(ウィスク)などの知能検査を受けたあと、「この数値や傾向は一生変わらないのでしょうか?」と保護者の方からご質問を頂くことがあります。大切なお子さんの将来を想うからこそ、「たった数時間の検査で、その後の人生が決まってしまうのではないか」といった不安がよぎるのも無理はないでしょう。
本記事では、知能検査のスコアの経年変化について、過去の研究データを基に解説していきます。
〇まず、はじめに結論です。
「全体としては安定しているけれども、個人差がある」
何百人という大人数のデータをまとめて分析すると、IQは年齢による変化が少なく、統計的には「安定している」と考えられます。しかし、一人ひとりの子どもに注目すると、話は別です。スコアは上昇することもあれば、下降することもあり、その動きには個人差があります。
特別支援教育の適格性評価を受けた344名の児童を対象とした調査では、WISC-Ⅳの全検査IQが2〜3年の間に10ポイント以上変動(上昇または下降)した子どもの割合が約25%(約4人に1人)存在したことが報告されています。さらに、15ポイント以上という大幅な変動を示した子どもも約6%存在しました1) 。
同様に、小児神経科クリニックに通う225名の児童・生徒を対象にした調査でも、WISC-ⅤのFSIQ(Full Scale IQ)が15ポイント以上変動した児童・生徒が8.7%いたことが報告されています 2)。
つまり、「多くの場合は安定しているが、成長の過程で一定の数値の幅の(ゆらぎ)が生じるのは決して珍しいことではない」というのが研究から分かる事実です。
知能検査受検時の年齢や特性によっても、検査結果の変動のしやすさは異なります。
例えば、自閉スペクトラム症(ASD)の子ども138名を対象に、5〜7歳、8〜10歳、11歳以上の3つの年齢群を比較した調査があります。それによると、11歳以上の子どもは全体的なIQだけでなく各領域のスコアも高い安定性を示したのに対し、5〜7歳の子どもは特に「処理速度」や「知覚推理」といった特定領域のスコアや、得意・不得意の差(凸凹)の表れ方において安定性が低く、変動しやすい傾向が報告されています3)。
低年齢だと特定のスコアや得意・不得意のバランスが変動しやすい理由としては、低年齢の児は不注意になりやすく、深く考えずに衝動的に答えたり、不必要な刺激に気を取られたりしやすいこと、「勉強」という枠組みに慣れていないこと、等が挙げられていました。
一方、11歳以上でスコアが安定する理由としては、注意力や自己コントロール力が発達すること、論理的な戦略を持って課題に取り組めるようになること等が挙げられていました3)。
さて、現場でたくさんの知能検査を実施している私達臨床心理士は、この研究結果をどう感じるでしょうか?
…非常に納得のいく結果です。統計通り、FSIQがあまり変動しないケースが圧倒的に多いことは事実ですが、大きく変動するケースも私達は経験しています。
以上のように、知能検査の結果は、決して「一生消えないラベル」でもなければ、絶対的なものでもありません。成長過程にあるお子さんの「今」を切り取った、一瞬の写真のようなものです。しかし、その中にお子さんを理解する手がかりがたくさん含まれているのも事実です。
「この子にはこんないいところがあった」「苦手なことは強みを活かしてこんな手立てをしてみよう」…そんな風に検査結果を前向きに活用できることを願ってやみません。
参考文献
1)Watkins,M.W.& Smith,L.G.(2013) Long-term stability of the Wechsler Intelligence Scale for Children–Fourth Edition.Psychological Assessment,25(2),477-483.
2)Watkins,M.W.,Canivez,G.L.,Dombrowski,S.C.,McGill,R.J.,Pritchard,A.E.,Holingue,C.B.,&Jacobson,L.A.(2022) Long-term stability of Wechsler Intelligence Scale for Children-fifth edition scores in a clinical sample.Applied Neuropsychology:Child,11(3),422-428
3)Okada, S., Kawasaki, Y., Shinomiya, M., et al. (2021). Long-term stability of the WISC-IV in children with autism spectrum disorder. International Journal of School & Educational Psychology.
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滋賀医科大学医学部医学科 卒業、大津赤十字病院初期研修医、滋賀医科大学医学部付属病院 小児科、静岡県立こども病院 血液腫瘍科、聖マリアンナ医科大学病院 小児科助教
日本小児科学会 小児科専門医、日本血液学会認定 血液専門医、小児血液・がん学会、日本血栓止血学会